[39] The Cooking of Japan


先日、待ちに待ったロサンゼルスからの船便が、我が新居に届いた。 80個にも及ぶ荷を開封し、納める作業に翻弄されながらも、開いた箱の中から出て来た愛読書の数々に、不思議な安堵感を覚えた。
ただでさえ、引越しというのはストレスを被るものだが、国際間の引越しは想像を絶する。これで夫婦関係が壊れないなら、よほど絆が強いものだと、後日互いの肩をたたいて労をねぎらうが、いつも国際間の引越しは、ある種の修羅場をくぐるような気分になる。

そんな時に、しばらく見ることも手にすることもできなかった、自分の愛読書に再会すると、国も環境も社会も全く異なる場所に今、立っていても、「今」は、これら愛読書と共に過ごした時間の上に成り立っているのだと実感することができ、これまで、糸の切れた風船のような気分になっていた自分に、糸は異様に長いけれども、まだ繋がっていると確認させてくれた。

その愛読書の中でも、何度も繰り返し使った料理の本の数々は、無理をしてでも持って帰って来た甲斐があった。 そうした料理本のコレクションの一つに、「The Cooking of Japan」という本がある。 この本は、隣の教会で定期的に開かれる、バザーに出品されていたものを1ドルで昔、購入した。TIME LIFE Books の世界の料理コレクションの一部として、1969年に出版されたものだ。
朝鮮戦争時にアジアに記者として赴任し、後日、 TIME LIFE Books の編集者となったRafael Steinberg の文章、そして、1955年に写真撮影の講演者として初めて日本を訪れて以来、度々日本を訪れていた写真家Eliot Eisofon の数多くの写真から、高度成長期に入りつつも、昔の日本が、まだ色濃く残っている様子が伺える。自分が生まれた頃の日本は、こんな様子だったのかと、懐かしくも遠く感じる、その日本の姿に、料理の本としてだけでなく、日本の文化や歴史を伝える本としても、十分価値があると言えるだろう。

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