[11] The Cat Who…


このThe Cat Who… シリーズの著者、Lilian Jacksoon Braun の経歴は面白い。
1966年から1968年にかけて、このシリーズの代表作となる「The Cat Who Could Read Backwards」、「The Cat Who Ate Danish Modern」、そして「The Cat Who Turned On and Off」を出版する。
当時、新探偵小説として話題をさらうも、その後18年間、出版界から全く姿を消してしまう。
1986年に「The Cat Who Saw Red」を出版して以来、現在までThe Cat Who… シリーズを28本出版しているが、私生活については極秘で、近年まで、彼女の生まれ年ですら定かではなかった。(2005年に新聞のインタビューにより、1913年と判明する。)

このシリーズでは、NYやLAの大都市における殺人事件を扱い、優れたレポートで表彰されていた新聞記者が、結婚の破綻とアルコール中毒という惨事を乗り越え、米国中部の小さな町の新聞記者として再出発することから始まる。
同じ新聞記者とはいえ、彼に任される仕事は、地元の芸術業界、インテリア装飾業界、アンティーク/ジャンクを販売する人々の世界といった、昔、自らの名を馳せた世界とは正反対の、全くの未知の世界。
背に腹は代えられないと、嫌々任務を引き受けるが、彼の行くところ、行くところ、思いがけない殺人事件が待ち構えている。

このシリーズは、各業界の表と裏が面白く描かれ、登場人物のカラフルさも楽しい。
そして、捜査に重要なヒントを与えてくれるのが、彼の猫たち。
猫好きな人には、たまらない、優れた猫描写はこのシリーズに愛着を与える。

一応、米国の町という設定だが、英国の流れの強い描写という点は、作者の独特の世界観を表している。それゆえ、英国物好きな人にも十分楽しめる作品だと思う。
軽い読み物だけに、ちょっと小説で逃避行するのに丁度良い。

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