[14] 女が外に出るとき
一昔、夢中になって読んだ作家、犬養道子さんの本を、先日、ロサンゼルスにある古本屋で見つけた。
東京で暮らしている時、海外で暮らすという事はどういうことか、国際的視野を持つという事はどういうことかを、日本語の文書で探していた時に見つけ、感銘を受け、彼女の本を片っ端から読んだことを覚えている。
今から思えば、当時、彼女の言わんとしている内容をどこまで、本当に理解していたかどうかは、非常にあやしいものがあるが(内にいて、外を想像し、理解するにはかなり限界がある)、しかし今、こうして再度彼女の著書「女が外に出るとき」を読むと、初版昭和51年というから、35年も昔の日本の姿を書いた、その文章の瑞々しさに変わりないことに驚かされる。
それどころか、内容そのものが未だに的を得ており、日本の社会的習慣と意識の進歩に殆ど変化のないことが、先進国と言われて四半世紀以上経つ日本が、未だに欧米の先進国レベルから見た場合、住み難い国と言われ続けている所以であることに気付かされる。
衣食は、簡単に他を真似することができるが、住においては、体験のみが変化を促すため、なかなか優れた部分を取り入れることが難しい。便利、能率的、快適といった優れた環境に身を置き続けた人間が、未開発の地に於いて、提案し続けない限り、そしてそれを取り入れる柔軟さをその地の人間が持たない限り、社会環境の進歩は望めない。
それゆえ、出版されたのが何時であろうとも、優れた提案をしている「女が外に出るとき」のような本を、積極的に参考にし続けるのは、大変意味があると思う。
戦後、未体験のまま、自由と平等を与えられた日本では、それらを独自の解釈で履き違えたまま現在に至るが、どこでどう勘違いをしているかを、客観視する上でも、この本は役立つに違いない。
今後の日本と、日本人の真の国際化の意味に於いて、現代の日本人に新たな方向性を示す指針として、未だに十分なり得る、優れた提案書である。
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