[23] The Shadow of the Wind
少年が父親に連れられて行った場所。そこは『忘れられた本の墓地』と呼ばれていた。この場所は、古本屋を営む人々の間で密かに管理されており、誰もが簡単にその存在を知ったり、中に入れることはなかった。
そこで少年は、父親から「伝統として、始めてこの場所に足を踏み入れた者は、一冊、自分の気に入った本を見つけ、その本を自分の生涯、責任を持って管理しなければならない。」と言われ、少年が選んだ本は、Julián Carax という聞いたこともない作家の「The Shadow of the Wind(風の影)」という本だった。
自分が一生面倒を見ると約束した本について、何も知らない少年は、その本とその作者について調べ始める。しかし、調べれば調べるほど、本とその作家は謎に包まれていく。と同時に、何者かが自分の後をつけ、自分が監視されていることに気付き、自分の身に危険が迫っている事を感じる。
この本の存在や、この作者の存在を知る者が少ない中、ようやく糸口を見つけ、判明した事は、この本をこの世から完全消滅させるためには、どんな手を使うことも厭わない人物がいるということだった。
1936年から1939年にかけて起きた、スペインの内戦は、第二次大戦中、そしてその後に欧米において共産主義支持者を拡大した要因だが、その内戦後のスペインを舞台に物語りは展開する。
物語に登場する本と同名の、この作品「The Shadow of the Wind」を書いた作者Carlos Ruiz Zafónは、スペインの作家で、この本もスペイン語で最初出版され、その後、英語に翻訳されたものが、瞬く間にヨーロッパでベストセラーとなった。現在この本は、30ヶ国語に翻訳されている。
内戦は他国間の戦争とは異なる性質を持ち、最も人間の醜さと惨さを引き出し、さらけ出し、後々までその傷跡は癒えないものだが、この作品でも、同国人を痛めつける異様な精神状態が時折顔を出す。
人間が人間らしく生きるということとは、どういうことか。少年は、大人になる過程の荒波にもまれながら、Julián Caraxという人物の人生を明らかにしていく。
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