[25] A Gentle Madness
有名大学の図書館には、貴重な書籍も数多く保管されているが、全体的に緩い管理・警備体制を用い、信用を基に貸し出しをする方式が多く、それゆえ時として盗難が発生する。収集家の集まるウェブサイトなどを見ていると、そうしたFBI手配の本泥棒について知らされることがある。
そんな本泥棒の一人にStephen Blumberg という人物がいるが、彼は、分かっているだけで270の北米の大学や美術館の図書館から、23,600 冊以上の稀で価値のある本(被害総額5億3000万円近く)を盗み、1990年に逮捕される。米国史上、最も数多くの本を盗んだ人間と言われている。
彼は、盗人であるが、彼の盗んだ本はBlumbergコレクションと呼ばれ、一応収集家としても捉えられている。
この例は極端であるが、20世紀後半から21世紀初頭、米国では一般の間で、本の収集が盛んになると同時に、本に関する本が数多く出版され、人気を浴びた。
そうした著書を出版し、本の収集の面白さと奥深さを解説する人物に、Nicholas A. Basbanesがいる。
彼は以前紹介した、雑誌「Fine Books & Collections」を始め、長年、本と作家に関する記事を書いてきたが、彼を一躍有名にしたのは、1995年、彼が初出版した著書「A Gentle Madness: Bibliophiles, Bibliomanes, and the Eternal Passion for Books」だった。
この本の第一部では、過去から現在に至るまで、愛書家が本を収集することへの情熱(それが正常か異常かは別として)について、テーマを追って解説されている。
第二部では、現代の本の収集家として、特記に値する人々について書かれている。
特に私が心に残ったものは、自分の人種の歴史を確立するために、あるいは自分の民族が持つ独自の言語を絶やさないために、本を収集している人々についてだった。
文書として存在しなければ、それは無いのも同然として扱われる国際社会において、自らの存在を後世に伝え続けるためには、それを他人にゆだねてはならない。他人まかせにするということは、他人によって簡単に自分の存在や歴史が塗り替えられてしまうことを意味するのだから。
正味500ページ以上の分厚い本だが、愛書家を自称する者にとっては魅力の詰まった本としてお勧めする。
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