[24] Matthew Shardlake シリーズ


作家C. J. Sansomの描く、英国ヘンリー8世の時代を舞台にした「Dissolution」、「Dark Fire」、「Sovereign」、「Revelation」、そして「Hartstone」は、弁護士Matthew Shardlakeを主人公とした歴史小説シリーズだ。
米国では、取り扱っている舞台や時代背景に馴染みのないこともあり、未だにそれほど人気はないが(もちろん一部のファンを除く)、英国では、この新人作家が「Dissolution」を発表した途端、強い支持を得て、現在に至る。
通常、新人作家と言うのは、将来性を買われ、発表作品と共に成長するケースが殆どだが、この作家C. J. Sansomの場合は、最初から非常に完成度の高い作品を描き、英国の有名作家すらも驚かせたほどだ。というのも、C. J. Sansomの場合、歴史の博士号を持つ弁護士という経歴を持つため、彼の描く世界は、今度作品を書きますから、上っ面だけ図書館で調べて・・・という類とは、全く質もレベルも異なる。

英国史を語る上で、何はなくとも、まずDissolution of monasteries(修道院の解散)を理解しなければならない。しかし、これを英国民以外が理解するには、様々な観点から困難なものがある。そこで、このShardlakeを主人公とした歴史小説シリーズは、大いに役立つはずだ。

このシリーズ作品は、あたかも自らがその場にいるかのような錯覚を与えるほどの、鮮明な表現方法が取られている。
読者を主人公のいる場に置かせ、その場から見て感じさせることで、外側からの客観的理解よりも、全くその場に不慣れな読者ですら、内側からその時代に生きているような実体験に近い感触を与え、理解させることに成功している。

又、主人公のMatthewは弁護士だが、当時の法律というものの役割、弁護士の立場など、法の世界に身を置いた作者ならではの具体的な解説も、独特の深さを作品に与えている。

一旦読み始めると止められない、スピード感を持った歴史小説。
歴史が面白くなること、間違いないだろう。

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