[4] You've Got Mail
本そのものではないのだが、本を取り上げた映画を紹介しようと思う。
2000年代、米国では大型チェーン本屋の登場により、長年その土地で人々に親しまれていた、小さな個人経営の本屋が次々に閉店することとなった。
Tom Hanks とMeg Ryan 主演のロマンティック・コメディ映画「You've Got Mail」の状況は、現実に起き続け、定価の2割、3割引が通常価格となる大型チェーン店とは、価格競争で勝てない小さな本屋は、生き残りに必死の状態が長く続いた。
米国で、小さな個人経営の本屋の強みは、なんといっても本を知っている、本をちゃんと読んでいる人間が店員として働いているがゆえ、尋ねれば、ちゃんと答えが返ってくることだ。
以前、英国ロンドンの本屋を取材した記事 (Gourmet Magazine, March 2005, Page 46) を読んで、笑ったことがある。ロンドンの某大型書店にて、店員に「Oscar Wilde はどこで見つかりますか?」と尋ねたら、「彼は昼食を食べに出かけていると思うわ」と返事が返ってきたというものだ。彼が生きて昼食をとっているなんて、奇跡以外何物でもない。どこでランチを取っているのか、教えて欲しいものだ。
この映画では、小さいけれども、とてもチャーミングな子供向けの本屋を母の代から経営しているMeg Ryan演じる女性の敵対役として、大型チェーン本屋の御曹司を演じたTom Hanks だが、私生活では、ロサンゼルスのPacific Palisades 地区にある、小さな本屋Village Books が閉店に追い込まれそうになった時、立ち上がり、人々にこの小さな本屋を救おうと運動をしたのは、他ならずTom Hanks だった。その甲斐あってか、その本屋は閉店することなく、現在でも地元ならず、ロサンゼルスの人々に愛され続けている。
そうした彼の私生活の視点を考慮に入れて、この映画を見てみると、この映画が言わんとしていることに気付くことができるだろう。
知識を持つ店員のサービスに加え、目的なくふらっと入って、たまたま手に取った本、存在すら知らなかった本に惹かれて買って帰る、という本好き、本屋好きの楽しみの一つである発見の喜びというものは、独自の選択眼を持つ書店のほうが起こり易いように思う。
最近、本屋を覗いていないな、と思われる方。ふらっと気分転換がてら、出かけてみてはどうだろう。
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