[8] The Reader


英国のリバプール大学(University of Liverpool)内の非営利団体が出版している「The Reader」と言う雑誌。
他の文芸雑誌とは内容が少し異なり、「読む」ということに焦点が当たっている。
この雑誌は、大学の生涯教育プログラムに於いて、文芸を教えていた教師たちが編集者となり、発刊され続けているが、この機関では、雑誌の発行だけに止まらず、一般向けに読書の普及活動も積極的に行っている。

近年、欧米で盛んになった、リーディング・グループ(年齢や性別を問わず、様々な背景を持つ人々が集まり、一冊の本を読み、読後、内容を話し合うというもの)活動に止まらず、あのCharles Dickens が1840年代に始めた Penny Readings (Dickens がリバプールを旅しながら、所々で、何千もの人々を前に彼の話を読み聞かせたイベント。1 Penny さえ払えば、誰でも聞くことができたことから、Penny Readings と呼ばれている)を復活させ、今でも名前通り、1 Penny で誰でも参加できるイベントを、毎年クリスマスの時期に行っている。
他にも、様々な読書推進イベントが行われているので、関心のある人はウェブサイト(thereader.org.uk)を見ると良いだろう。日本でも、こうした活動を取り入れることで、学校卒業後、結婚後、退職後に起こり易い、活字離れを防ぎ、国民の知識レベルを高めていく可能性に期待できるのではないかと思う。

この「The Reader」では、有名無名の人々が執筆した作品や、インタビュー記事が掲載されているが、名が知られていようが、いまいが、読んでいてハッとさせられる、インスピレーションを与えられるという点では、どの作品も一律に優れている。

読むことが考えることだと言う哲学者。本のない、南米ペルー北部に赴く息子と、その時期、共に分かち合える体験として、同じ長編大作を読むことにした父と息子。作曲と小説を書くことの共通点。目まぐるしく変化し続ける本の販売方法と出版業界の将来について。読むことにまつわる、様々な作品が、その時々のテーマに合わせて掲載されている。

文芸雑誌も面白いが、こうした独特の視点から作られた雑誌は、自分の視点を少し広げる手助けをしてくれる。

Comments

Popular Posts