[18] GRANTA 109
GRANTA は、1889年に英国ケンブリッジ大学の学生が創刊した小説雑誌。
A. A. Milne、Michael Frayn、Stevie Smith、Ted Hughes、そしてSylvia Plathなど、英国文学の近代古典と言われる作家たちの初期の作品が掲載されていたが、1970年代に運営が上手くいかなくなり困難に遭遇する。
しかし、1979年にケンブリッジ大学に固執しない、優れた新人作家たちの作品を集めた雑誌として再創刊し、現在に至る。
近年、編集長が幾度か変わり、現在の雑誌の質と趣向は、私自身どうかと思う部分はあるが、過去に出版された号もまだ手に入り易いため、特に目当ての作家がいる場合など、これまでのものの中から探して買い集めてみると良いだろう。
毎号、テーマに沿った作品が掲載されているが、109号はWorkと題し、働くことについて書かれた作品が掲載されている。
この号は、私の目当ての作家、Yiyun Li の作品が掲載されていることから購入したが、他にもSalman Rushdie、Julian Barnesの作品も掲載されていて、とても得した気分になった。
Daniel Alarcón著「Life Among the Pirates」はペルーの海賊出版について書かれている。発展途上国の貧富の格差から、出版業界が一般市民とはかけ離れた、特殊な存在で機能しているが為に、海賊版の書籍が溢れかえっている状態。それでも人々は本から情報と娯楽を求めている様子が描かれており、興味深い作品だった。
Steven Hall著「What I Think About When I Think About Robots」では、一時NASAで働いていた(!)経験を持ち、現在はInstitute at Carnegie Mellon University でRoboceptionist(ロボットの受付係)として勤務するTANKという名のロボットについて書かれている。人間化した現在のロボットの世界に、私はどう捉えて良いものか、不思議な思いがした。
他にも、アフリカのシエラレオンで、ただ一人の獣医として働くGudush Jalloh医師の話など、興味深く、優れた作品が多数掲載されている。
優れた小作品の集まったGRANTAを通し、現在の英文学、ノンフィクション作品を試し読みしてみると良いだろう。
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